日本の住宅が夏暑く冬寒くなってしまう理由は?
かつて日本における伝統的な家屋は、夏をメインに考えられていました。高温多湿になる夏場の通気性を考慮した住宅が建てられ、冬場は服を着込むことで寒さをしのいでいたのです。
このような背景がある日本の住宅は、先進国の中でも快適性が低いといわれています。その理由のひとつが断熱性能の低さです。寒さの厳しいヨーロッパでは、人が室内で健康的に過ごすために、下回ってはいけない室温が法律で設定されています。この基準を満たさない住宅は販売することはおろか、建築することもできません。このように、住宅の断熱性に対する厳しい決まりが定められているのです。
一方で、日本はこのような住宅の断熱性能に対する制限がありませんでした。近年では、日本国内のエネルギー消費量の約3割を建築分野が占めていることにより、建築物省エネ法が改正されました。省エネ法では、断熱性能も含む省エネ基準が定められています。そして、2025年4月の施行以降に建てられるすべての新築住宅に、省エネ基準の適合が義務付けられるのですが、省エネ基準で定められている断熱性能(等級4)は、他の先進国においては性能が低すぎて建築できないレベルとされているのです。
近年の日本の夏の気候は高温多湿に加え、猛暑・酷暑と呼ばれるほど全国的に気温が高くなっています。住宅の通気性だけでは到底涼しくならず、快適に過ごすことはできません。これらのことから、日本の住宅は「夏暑く冬寒い」といわれているのです。ここからは、断熱性能が低い家と考えられる具体的な原因3つを解説していきます。
参考元:国民生活センター|新連載 省エネ住宅でも快適に住まう工夫 第1回 環境に配慮した 「省エネ住宅」とは(1)参考元:一般社団法人 住宅生産団体連合会|2050年カーボンニュートラルの実現に向けた住宅業界の取り組み参考元:国土交通省|省エネ基準適合義務化
原因1:開口部の素材や性能
住宅の断熱性能に大きく関わっているのが開口部。
とりわけ、窓の性能が住宅の断熱性能を左右すると考えられています。天井や壁、床は断熱材を厚く入れることで、外気温の影響を受けにくくする工夫ができます。一方で窓は断熱性が低く、夏の熱気や冬の冷気が伝わりやすい部分です。
日本の住宅ではアルミサッシが多く用いられてきましたが、アルミは熱伝導率が非常に高く、外気の熱が出入りしやすいという特徴があります。そのため、アルミサッシを採用している場合、サッシ部分を介して室温が外気に影響されやすくなるのです。
原因2:空調計画が不適切
従来の住宅は家全体の断熱性が低く、必要な場所だけ空調設備を設けて室温を調整するという考え方が主流だったため、リビングなど人が留まる部屋の空調しか考えられていませんでした。また、気流の調整をおこなうための空調計画が不十分であったことから、暖房を入れても天井付近しか暖まらず、底冷えするといった室温のムラにもつながっていたのです。
原因3:経年劣化による断熱性・気密性の低下
何十年と住み続けた住宅は、経年劣化によるゆがみですき間が生じることがあります。すき間ができて気密性が低くなると、外気が出入りしやすくなるため、どれだけ室温を調整しようとしても快適な温度を保てなくなってしまうのです。
古い住宅の場合、そもそも断熱材が入っていないケースもありますが、断熱材が入っていたとしても劣化によって効果が薄れてしまいます。
「夏は涼しく冬は暖かい」家を実現する方法は?
「夏は涼しく冬は暖かい」家づくりをするためには、どのようなポイントを意識すればいいのでしょうか。ここからは、一年を通して快適に過ごせる家づくりのポイントをご紹介します。
高断熱・高気密は必要不可欠
夏涼しく冬暖かい家づくりの重要なポイントといえば、断熱性能です。
壁や床、天井、屋根に高性能な断熱材を使うだけでなく、窓やドアといった開口部には断熱性能の高い部材を採用すると、より外気の影響を受けにくくなります。また高断熱の効果を発揮するためには、気密性の高さも必要です。気密性が低いと、すき間から夏の暑い空気や冬の冷たい空気が出入りしてしまいます。1年中快適な室温を保つためには、断熱性だけでなく気密性も確保する必要があるのです。
>>参考コラム:注文住宅を建てるなら性能が重要!住宅性能の種類からメリットまで解説
断熱性能・気密性能に関わる基準を知る
住宅の断熱性・気密性を確保するためには、基準となる値を知っておくことも大切です。住宅の断熱性・気密性に関わる以下の3つを確認しておきましょう。
UA値
Q値
Q値もUA値と同じように熱の逃げやすさを表しています。Q値とUA値の違いは、計算方法。UA値は外皮面積を元に算出するのに対して、Q値は延べ床面積を元に計算します。また、UA値では換気による熱損失を含めない一方で、Q値は換気による熱損失も計算に入れます。
2013年の省エネ基準法改正以降、省エネ基準においてQ値に代わりUA値が定められたため、断熱性能を表すときにもUA値が用いられることが多くなりました。現在は国によるQ値の基準値は明確に定められていません。
C値
C値とは気密性能に関わる数値で、住宅にどれほどすき間があるかを表しており、値が小さいほど気密性に優れているということになります。C値を測るためには、建築中の住宅で気密測定を行う必要がありますが、中にはC値を重視せず、測定をしないハウスメーカーや工務店もあります。しかし、夏は涼しく冬は暖かい住宅には気密性も欠かせないため、測定して確かめることをおすすめします。国による基準値は定められていませんが、目安としてC値が0.5~1.0㎠/㎡以下であれば、高気密住宅といえるでしょう。
空気の循環を考えた間取り
日差しを遮る工夫
「夏涼しい家」を実現するもうひとつのキーポイントとなるのが、「日射遮へい」。夏の日射熱を遮ることで、室内の温度が上昇するのを防ぎます。太陽光を遮るには、カーテンやブラインドを採用したり、庇(ひさし)や軒を設けたりといった方法が考えられます。ただし、夏は暑い日差しを遮りたい一方で、冬は太陽の暖かさを取り込みたいところ。そのため、夏と冬で異なる太陽光の入り方に考慮しながら、窓の高さや庇の長さを設計しなくてはなりません。
「夏は涼しく冬は暖かい」パッシブデザインとは?
「夏は涼しく冬は暖かい」一年中快適な家をつくっていくためには、断熱性能や気密性能を高めるだけでなく、風通しや日差しにも考慮しなくてはなりません。
そんな、自然の特性を活かした設計手法が「パッシブデザイン」です。パッシブデザインでは、断熱・日射遮へい・通風・昼光利用・日射熱利用暖房の5つを考慮した家づくりを行います。
パッシブデザインのメリット
自然エネルギーを有効活用したパッシブデザインで設計すると「夏は涼しく冬は暖かい」一年中快適な住空間が実現できます。冷暖房をはじめ、照明などの使用頻度も低くなるため、光熱費が節約できるといったメリットも。また、高断熱・高気密の省エネ住宅は、住宅ローンの減税制度などの優遇措置が受けられることもあります。
パッシブデザインのデメリット
夏は涼しく冬は暖かい家ならR+houseネットワークの工務店へ
R+houseネットワークの工務店では、パッシブデザインが得意な建築家とタッグを組んで家づくりを行います。全国で活躍する経験豊富な建築家が手掛ける家づくりでは、敷地周辺の環境を徹底的に読み込み、土地のポテンシャルを活かしたプランをご提案。建築コストも考慮しながら要望を整理するだけでなく、建築家と工務店が連携することで設計料を抑えたパッシブデザインの設計を可能にしています。夏は涼しく冬は暖かいマイホームをコスパ良く叶えたいなら、R+houseネットワークの工務店へ是非ご相談ください。
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